【早実VS日大三】東京大会春季決勝戦への提言。高校野球はこれでいいのか。

 

4月27日,神宮球場で高校野球春季東京都大会決勝が行われた。東都リーグの試合終了後,18時にプレイボール。そして乱打戦の延長戦の末,早実が18-17で日大三を下し優勝。試合が終わったのは22時6分だった。

盛り上がりを見せたことは間違いないだろう。観衆の大半のお目当てであろう早実3番の清宮は二本のアーチを描き,2年生4番の野村も同様に2本塁打。逆転に次ぐ逆転,気持ちのいいまでの打ち合い。「高校野球ファン」としては楽しい一夜であっただろう。

早実VS日大三 異例のナイター開催。高校野球はこれでいいのか。

しかし,本当にこれでいのか,という気持ちはぬぐえない。試合開始時間の件である。遅すぎる。当たり前のことだが,彼らは高校生であり,その本分は勉強である。彼らは激戦のほんの11時間後には授業が待っているのである。当然試合終了後には片付けや取材が待ち受け,閉会式を中止にしたところで神宮を出るころには11時近くになるだろう。それは応援に来ていた生徒も同様であり,女子生徒たちへの心配ごとも出てくる。

これに対して,東京都高野連理事長は「まさかこんな展開になるとは・・・。東京は交通事情も良いので10時をメドに帰宅を呼び掛けた。」と語り「これだけ長くなってしまったので。彼らは高校生で学校もある。今後については考えないといけないかもしれない」と言葉を続けたという。

私は,何を言っているのか,と思う。平均的な試合時間が2時間半ほどであるにしても,この決勝戦の組み合わせでそうなるとは考えにくいだろう。打高投低の早実に,強力打線相手にエースを見せる必要がまったくない日大三。打ち合いになるのは必至である。もちろんそれで延長にもつれるところまでは予測できないにしても,試合時間が長くなることは簡単に予測できるし,何より不測の事態には常に備えるということが主催者側のやるべきことだろう。特に,未成年の大会なのだ。高校野球というものが他の高校スポーツに比べて特殊であるのは今更だが,それにしても「異常事態」であるこの決勝戦で,その程度の準備で運営を行っていることにはっきりと不快感を覚える。

そもそも神宮に会場を移した理由は,決勝戦の混雑が予想され,安全面に不安があるからだと発表がされている。そして観衆が2万人を超え,その面では狙い通りだったという報道もある。これについても,ちょっと待て,である。

なぜ観衆が2万人も詰め掛けたのか。それは試合がナイターになったからであろう。学生たちは学校が終わってから余裕をもって応援に行くことができるし,仕事帰りのサラリーマンも観戦に行くことができる。これを予定通りに平日の昼間に行っていたならどうなっていいただろうか。予測でしかないが,私は観衆は半分以下になっていただろうと考える。

条件が同じではないものに対して,その側面だけ見て成功というのはナンセンスだろう。

 もちろん,高野連にとっても大きな決断であり,そのおかげでたくさんの観衆が試合を見て楽しめたということ,安全面に関しては確保できていたということは否定しない。しかし,主催者側が1番に考えなければならないのは選手のことである。生徒たちのことである。それに関して言えば私はこれが最善だったとは言いたくないし,もっと議論を行ってほしい。少なくとも「考えないといけないかもしれない」で終わってほしくはない。それはメディアもそうである。この側面について言及しているメディアもあるが,もっと大々的に報じ,世間に問題提起をしてほしい。高野連という閉ざされた組織にそれができるのはメディアだけである。スター選手の一挙手一投足を報じるだけがメディアのすることではないだろう。

 最後に両校の選手,関係者各位,本部役員,球場スタッフの方々への「お疲れさまでした」という言葉をもってこの文章を締めくくることにする。

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